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ドーパミンと音楽の関係を探る ~筑波大学・保健学博士 須藤伝悦先生に聞く~

まだ欧米諸国ほど音楽療法が浸透していないものの、日本でも近年、音楽が精神作用に与える影響について、急速に研究・実践が進んでいます。 私たちは普段から、生活の場面や時間帯、その時の気分などに応じて、音楽を楽しんでいます。しかし、その際に脳の中でどういった物質が関与し、どんな作用を及ぼすのか、その仕組みを詳しくご存知の方はまだ少ないのではないでしょうか。今回は、それらについて30年にわたり研究されている須藤博士に、脳内物質と音楽の関係や音楽療法の未来とソリチューズとの接点などについて、お話をおうかがいしました。

写真―須藤博士が、ずっと研究していらっしゃる脳内物質について、簡単に教えて頂けますか?

「人間の感情・行動などは、神経伝達物質と呼ばれる小さな化学物質を介した化学反応の結果として現れるのです。その一つであるドーパミンは“快感物質”として働き、楽しい気持ちを作り出す時に主役を演じています。お酒に酔う深さや睡眠の深さなどの日常生活にも密接に関係しています。しかし、この物質が異常に減少すると、パーキンソン病・レビー小体型認知症・てんかん症・注意欠陥多動性障害(ADHD)・ある種の高血圧症などの発症原因になります。」

―ドーパミンは、どうしたら生合成されやすくなるのでしょう?

「ドーパミンの合成には、カルシウムが大きく関与します。ラットを使った実験により、脳内でカルシウムがカルモジュリンという蛋白質を活性化し、ドーパミンの合成を促進することがわかりました。」

―なるほど。食事を通じてカルシウムをより多く摂取することで、ドーパミンをたくさん生み出すことが出来るのですね。

「ええ、その通りです。てんかん症のマウスを研究してみると、このカルシウム依存性のドーパミンの合成が異常に減少していることが解りました。しかも、異常な減少は発作後改善しているのです。つまり、『発作自体は病気ではなく、発作は脳内の不都合な状況を改善するために要求される“神秘的な現象”なのではないか?』と考えられるのです。この結論は、スポーツで体を動かすことが脳機能を活性化するとの仮説を導きました。実際に調べてみると、スポーツにはカルシウム代謝ホルモンを活性化して、カルシウムを増加させることにより、ドーパミンの合成を高める働きがあることがわかりました。しかも、パーキンソン病・てんかん症・高血圧症などの患者さんがスポーツによって症状が大幅に改善されるのです。」

―スポーツによってもドーパミンの生合成を助けることができるというわけですね。では、音楽に関してはどうでしょう?

「脳内で重要な働きを持つドーパミンが食事やスポーツによって増加することが解ったのですが、他にも日常生活の中に隠された鍵がないか探しておりました。その答えは、ずっと私と一緒に研究している秋山佳代博士の生活の中に隠されていたのです。彼女は、『役目が終わったら処分するのはしのびない』と実験で使い終わったラットを連れて帰って一緒に生活していたようですが、ある時、彼女が弾くピアノの曲目によってラットの反応が異なり、様子が変化することに気づきました。そこで『音楽も脳機能に影響を与えるのではないか?』と疑問を抱き研究しました。そして、ラットに様々な音楽を聴かせて分析すると、モーツアルトのある曲で脳内のドーパミンが上昇し、血圧が低下し、行動量が減少したのです。」

―モーツアルトと言えば、一時期ものすごく話題になりましたね。

「確かに、数年前いわゆる『モーツアルト効果』(モーツアルトの楽曲が学習や作業能率等を高める効能を持つとする説)が爆発的にブームを呼びましたが、その後「効果無し」とする反論が出るなどして、真偽が二つに分かれています。実際に実験してみると、モーツアルトの音楽にはドーパミンを高める効能を持つものがあることは、間違いないようです。」

―モーツアルトの音楽は、一体どこが違うのでしょう?

「他の作曲家の作品と比較して、モーツアルトの楽曲はキーが高いことが知られています。そこで『高い音、すなわち高周波数の音が、ドーパミンの合成に密接なつながりを持つ』と考えられるので、ラットに周波数を変えた同じ曲を聴かせる実験を行ったところ、高周波数の音を聴かせた時にドーパミンの合成が多く、血圧の降下率も高いことが確認されました。」

―ということは、モーツアルトに限らず、周波数の高い音・楽曲は音楽療法における利用価値が高いと言えますね。なぜ高周波の音がこれほど脳に作用する効果が強いのでしょう?

「実は、胎児が耳にする母親の声や子宮内音は周波数が高いのです。本人は自覚していませんが、これらの音を脳は覚えているのです。つまり、胎児の時に一番安心できる音として脳に刷り込まれた高周波の音を聴いた時に、快感物質であるドーパミンの分泌を促すと考えられます。」

―では、ソリチューズはどうでしょう?

「人間が健康をとことん求めると、最終的には“自然”に帰っていきます。又、自然の音には、高周波がたくさん含まれています。そのことを考えると、自然音をフィーチャーしたソリチューズは健康に間違いなく効果があると言えるでしょう。特に、楽器や歌より自然音をメインとした作品、もしくは自然音のみの作品は、より一層効果を期待できると思います。」

―ありがとうございます。本日は、ドーパミンの分泌が人間の「快・不快」という情動に密接に関連していること、『カルシウムを多く含んだ食事の摂取』『日常のスポーツ』『高周波の音を含んだ音楽の鑑賞』、この3つを習慣づけることにより、ドーパミンがより多く分泌されて「快」になれる、又、病気の症状が改善する可能性が高い、ということを教えて頂きました。私たちは、先生のこうした長年の研究成果が少しでも多くの方の生活に定着していくよう、世の中へ啓発していくことが社会的使命だと考えております。

「そうですね、私も全く同じ考えです。原因は明確に特定されていませんが、近年ドーパミンの分泌が少ない為に起こる病気が増えてきました。便利すぎる生活の中に原因の一端があるのかも知れません。しかし、時代の流れは後戻りできませんので、日常生活の中で簡単に出来る方法で、ひとりひとりが自分自身をケアしていくことが大切です。複雑すぎる現代社会だからこそ、こうした情報を多くの方々に発信して頂きたいと思います。」

温厚な物腰と口調の中に、ご自身のドーパミンの研究を人々の健康の為に生かしたい、という確固たる意志が見え隠れする須藤博士。ソリチューズによる効能実証についても「もちろんご協力します」と快くご承諾して頂きました。今後の音楽療法界にまだまだ新たな風を吹き込んでくれそうな先生のご活躍からは、当分目を離せそうにありません。
取材:西田 明、文責:相澤 英一

須藤 伝悦(すとう でんえつ)プロフィール

モーツアルトが求め続けた脳内物質1952年、山形県に生まれる。保健学博士。北里大学卒業後、筑波大学勤務。
40年にわたり中枢機能や動物の行動の研究を続け、脳内の快感物質であるドーパミンの合成メカニズムを解明し、種々の疾病の発症メカニズム解明に応用。
内閣総理大臣賞、米国商務省特別賞・読売新聞社賞・毎日新聞社賞・トヨタ財団研究奨励賞・ヤマハ音楽振興会奨励賞・山形県特別教育賞などを受賞。
日本薬理学会学術評議員、ニューヨーク科学アカデミー会員、国際学生科学技術フェアの特別審査委員等を務める。

※ 参考文献:「モーツアルトが求め続けた脳内物質」著:須藤伝悦

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